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みらい望遠鏡の学術利用検証を行いました

さる令和6年3月26日の夜間、大分市の日本文理大学(以下、NBUと表記)工学部 航空宇宙工学科 藤田研究室から教授の他、3名の学生がお越しになり、静止衛星軌道上の人工天体の観測を行いました。

みらい望遠鏡は日本国内でも数少ない人工衛星追尾機能を持っており、これまでも国際宇宙ステーション(ISS)の追跡観測を行ってきました。

藤田研究室では、現在問題化しつつある「スペースデブリ」(地球近傍に拡散する破壊され制御不能となった人工天体の残骸)に関する研究を行っており、既知のデブリ以外に拡散しているデブリを検出するための技法について研究を重ねております。

学術利用のため当館の営業時間外を利用して、みらい望遠鏡の焦点面を貸し出し,撮像を試みました。

「NBU藤田研究室との共同観測画像」

気象衛星「ひまわり」(静止衛星)は日本上空のほぼ一定の場所に置かれているため、背景の星々に合わせた望遠鏡の動きに対しては、線状の軌跡を描くような画像として残ります。(上図)

気象衛星「ひまわり」(静止衛星)に合わせて望遠鏡を駆動させると、背景の星々は動きのある軌跡を残しますが、静止衛星は点像として画像に記録されます。(下図)

静止衛星と言えど、地球の自転周期と同じスピードで衛星の軌道上を動いていますので、地球の重力場の変化を受けたり太陽活動による太陽風の影響で軌道変化が若干ありますから厳密には全く同じ場所に留まっているわけではありません。今回の観測では、直近の軌道要素を入手し人工天体追尾モジュールへのデータ設定で目標人工天体を追尾し続けることが確認できました。

その後、既知のスペースデブリの中から1978 年 6 月に爆発したロシア放送衛星 EKRAN 2 を起源とするデブリ(国際標識 EKRAN 2 DEB 1977-092H) をターゲットにし、追跡を行った。このデブリは破壊された人工衛星の大きな破片が回転運動を行いながら漂っているため、太陽光の照射面(および反射面)の時間変化により光度が変化していることが知られており、今回はその光度変化を確認することができました。この変化を連続的に観測するとライトカーブを得ることができ、デブリの回転スピードや回転軸の向きが求められ、このデブリが発生する際の物理モデル(破砕物体の大きさ・材質、および、爆発の発生箇所やエネルギーの大きさ等)を推定することができるため、測光だけでは把握が難しい小サイズのデブリの地球近傍宇宙空間における分布状況を知る手掛かりとなります。

 「NBU藤田研究室との共同観測動画」

リンク先(別ウインドウで開きます)は、光度変化する EKRAN2DEB の動画


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